「まあ、あとは現在、大和さんは私について回っているから担当のクライエント持っていないし、スケジュールが組みやすいっていうのもあるかな」
そう言われてしまえば、月穂はなにも言うことはない。
確かに、まだ担当を持たない自分が行けば引き継ぎの問題もなく、話はスムーズに纏まる。
話は急だったが、ひとりでロスへ行ったときを思い出せばなんでもできる気がしてきた。
「それとも、やっぱり院内にこだわりがある?」
月穂は口元を引き結び、力強く自分の手を重ね握った。
「いいえ。その話、ありがたくお受けいたします。力不足かもしれませんけれど……精いっぱい頑張ります」
月穂の瞳には決意が現れていて、花田は顔を綻ばせた。
「そう言ってくれると思ってた。じゃあ、先方と日程について話を進めるから」
「はい。よろしくお願いします」
月穂が改めて深くお辞儀をすると、軽く肩に手を置かれた。
「週に二、三日っていう約束になると思うから。こっちとあっちで、ちょっと通勤大変かもしれないけれど」
「あ、かけ持ちみたいな感じでいいんですね」
月穂は胸を撫で下ろす。週の半分は病院に来られるなら、今までの業務も継続して学べる。
なにより、派遣先の企業でなにかあったときに、花田に相談することがしやすくなるから心強い。
「ちなみに、どういった企業なんですか?」
少し気持ちが落ち付いてきたところで、肝心の勤務先を聞いていなかったことに気づく。
花田は書棚に向かい、書類を出し入れしながら答えた。
「あ、言ってなかったわね。航空会社なの。そこの上層部に私の知人がいて、頼まれちゃって」
「航空……会社?」
月穂の胸がドクンと跳ねた。頭に浮かんだのは、祥真の顔。
(いや……そんな、ありえないでしょ。昨日みたいな偶然が、また起こるなんてありえない)
「有名な航空会社。――UALよ」
花田の言葉に、月穂はうっかり手にしていた本を落としてしまった。慌てて膝を折り、本に手を伸ばしながら、自分の心臓が大きく騒ぐのを感じた。
(まさか本当にUALだなんて! あの人がいるところじゃない!)
足が震えるのを必死に隠し、立ち上がる。
「それじゃあ、業務を始めましょうか」
月穂は「はい」と笑顔を作って支度を始めたが、こんな偶然があるのかという衝撃を拭えずにいた。
ただ、祥真とまた顔を合わせるかもしれないということに対し、憂鬱な気持ちになることはなかった。
そう言われてしまえば、月穂はなにも言うことはない。
確かに、まだ担当を持たない自分が行けば引き継ぎの問題もなく、話はスムーズに纏まる。
話は急だったが、ひとりでロスへ行ったときを思い出せばなんでもできる気がしてきた。
「それとも、やっぱり院内にこだわりがある?」
月穂は口元を引き結び、力強く自分の手を重ね握った。
「いいえ。その話、ありがたくお受けいたします。力不足かもしれませんけれど……精いっぱい頑張ります」
月穂の瞳には決意が現れていて、花田は顔を綻ばせた。
「そう言ってくれると思ってた。じゃあ、先方と日程について話を進めるから」
「はい。よろしくお願いします」
月穂が改めて深くお辞儀をすると、軽く肩に手を置かれた。
「週に二、三日っていう約束になると思うから。こっちとあっちで、ちょっと通勤大変かもしれないけれど」
「あ、かけ持ちみたいな感じでいいんですね」
月穂は胸を撫で下ろす。週の半分は病院に来られるなら、今までの業務も継続して学べる。
なにより、派遣先の企業でなにかあったときに、花田に相談することがしやすくなるから心強い。
「ちなみに、どういった企業なんですか?」
少し気持ちが落ち付いてきたところで、肝心の勤務先を聞いていなかったことに気づく。
花田は書棚に向かい、書類を出し入れしながら答えた。
「あ、言ってなかったわね。航空会社なの。そこの上層部に私の知人がいて、頼まれちゃって」
「航空……会社?」
月穂の胸がドクンと跳ねた。頭に浮かんだのは、祥真の顔。
(いや……そんな、ありえないでしょ。昨日みたいな偶然が、また起こるなんてありえない)
「有名な航空会社。――UALよ」
花田の言葉に、月穂はうっかり手にしていた本を落としてしまった。慌てて膝を折り、本に手を伸ばしながら、自分の心臓が大きく騒ぐのを感じた。
(まさか本当にUALだなんて! あの人がいるところじゃない!)
足が震えるのを必死に隠し、立ち上がる。
「それじゃあ、業務を始めましょうか」
月穂は「はい」と笑顔を作って支度を始めたが、こんな偶然があるのかという衝撃を拭えずにいた。
ただ、祥真とまた顔を合わせるかもしれないということに対し、憂鬱な気持ちになることはなかった。