「ニュースで事故を知った瞬間、走り出したくなりました。隼さんはとても責任感の強い人だから……。自分よりも乗客や仕事を優先しそうで……怖かった」

 掠れる声で懸命に言い切った。

 UAL社に行くようになり、色々と知ることができた。

 パイロットという仕事の重責や難関さ、果ては身体の管理まで。
 そして、隼祥真というパイロットは、繊細な心の持ち主でありながら、責任感は人よりも強く……誰よりも飛行機が好きだということ。

 なによりも広い空が大好きで、もしかすると地上から遥か離れたなにも遮ることのないその場所でなら、自分の命が尽きても構わない――。

 そんなふうに思ってしまうのではないかと、不安で不安で仕方がなかった。

「本当、無事でなにより……」

 喉の奥から熱いものが込み上げ、言葉が続かない。
 次に口を開けば、同時に必死で瞼を細めてこらえている涙が落ちそうだ。

 唇を一文字に引き結び、再び指に力を入れてグッと堪える。

 全身を強張らせていると、一瞬、大きな影を落とされた。

 家の中なのに暗くなったことに疑問を感じ、ゆっくりと目線を上げていくと、いつの間にか祥真が立ち上がっていた。
 彼を見上げるや否や、頭から抱きしめられる。

 完全に光を遮られ、祥真の重みを感じていると、触れている部分から彼の声が響いてくる。

「エンジントラブルがわかった瞬間、俺がなにを思ったと思う?」

 祥真の表情は見えなかったが、質問を投げかけた声は笑い交じりだ。
 なにか面白い回答なのかと思うと、月穂は答えもわからず、ふるふると首を横に振った。

 祥真は、同じように「ふ」と笑いから入る。
 直後、彼は楽し気な雰囲気を一変させ、トーンを落とす。