言葉を詰まらせ相変わらず俯いていると、そっと頭を撫でられる。
 優しい手つきに誘われるように、月穂はやおら顔を上げていく。

「こっちこそ。俺から連絡来るの、待っててくれたんじゃないの?」

 屈んでいる祥真と、途中で視線がぶつかった。

 彼の瞳には怒った色など浮かんでいない。
 むしろ、すべてを包み込んでくれそうな温かさを感じた。

「悪かった。なにせ、俺も番号知ったのはついさっきだったから」
「えっ……」

 祥真の説明には、さすがの月穂も目を見開いた。

 月穂は、金曜日から今日まで、なんだかんだと諦めきれずに祥真からの連絡を待ち続けていた。

 だが、彼からの着信は一度もなかった。
 その理由が、まさか連絡先が伝わっていなかったということだとは考えもしない。

 一気に全身の力が抜け落ちる。

「今日、夕貴が教えてくれた。君のところへ早く行けって急かされて」

 祥真は月穂の伝言を止めていた夕貴を非難することだってできるのに、そうはしなかった。

「あの日、怪我のことを知っていたら、すぐに飛んでいったのに」
「そんな大袈裟です。大した怪我でもないですから。……でもその気持ち、よくわかりますけど」

 月穂は口に笑みを浮かべ、膝の上の手を合わせ握った。次第に両手が小刻みに震え出す。