BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

数十分後。祥真が管理へ連絡をし、業者が駆けつけ、無事エレベーターの扉が開く。
 祥真は周りに人がいるのも気にせずに、座り込んでいた月穂を抱え上げた。

 月穂はなにが起きたのかと一瞬頭が真っ白になる。けれど、すぐに正気に戻り、耳を真っ赤にして訴える。

「えっ。は、隼さ……」

祥真がギプスに目をやって苦痛そうに眉をしかめた。

「怪我っていうのは足だったんだな」
「あ、でも松葉づえがあるので……」

 やんわりと『だからひとりで歩けます』と伝えたつもりだったが、身体は宙に浮いたまま。
 それどころか、祥真は近くにいた管理人に言った。

「申し訳ないですが、それを預かっていてくれますか。彼女を部屋へ運んだあとに取りに戻りますので」
「あ、ああ。じゃあ、管理室のほうで預かっておきます」
「ありがとうございます」

 勝手に話をつけると、月穂を抱き抱えたままひと気のない階段へ足を向ける。

 暴れまわる心臓に気づかれてしまいそうだと思いながらも、それを抑制することなどできない。

 祥真の腕は逞しく温かい。
 安心感と緊張の両方を感じながら、ちらりと彼を見た。

 端整な顔が間近にあり、形のいい唇が視界に入った途端、パッと逸らす。
 落ち着かない鼓動を抑えるように、月穂はカバンを抱えていた両腕に、さらに力を込める。

 すると、「ふっ」と気の抜けた笑い声が落ちてくる。