『だけどこんな経験してもやっぱり、俺は飛行機が好きなんだ』
携帯から聞こえた声だけで、祥真の表情が目に浮かぶ。
きっと、照れることなく真っ直ぐと前を見据えて言ったのだ。
その澄んだ瞳には、一面に広がる空を映し出して。
「……はい。そんな隼さんが、私は本当に素敵だと思っています」
自分には彼が見ている景色を見ることはできない。けれど、彼のように前を向くことはできる。
祥真もまた、己の弱さと向き合ったのだ。ならば自分も――。
『着いた。どっち側のエレベーターで、どのあたりで止まってるかわかる?』
月穂が携帯を持つ手に力を込めたとき、祥真に言われ、ハッと顔を上げる。
すぐ近くまで祥真が来ている。
それがわかると、月穂はますます早く祥真と会いたくなる。
「向かって左に乗って……三階直前のことで……」
逸る気持ちを抑えて説明すると、電話の向こうから階段を駆けあがる足音が遠く聞こえる。そして、扉の奥からコンコンとノックのような音がした。
「あ。音が重なった。この辺りにいるな」
スピーカー越しではなく、直に祥真のくぐもった声が聞こえた。
「大丈夫か?」
月穂は左手をエレベーターの扉にくっつけた。
分厚く冷たい扉なのに、温かさが感じられる気がする。「はい」と小さく答えた。
祥真もまた、無意識に外側の扉に手を添え、敢えて携帯を離して言う。
「あともう少しだから。頑張れ」
携帯から聞こえた声だけで、祥真の表情が目に浮かぶ。
きっと、照れることなく真っ直ぐと前を見据えて言ったのだ。
その澄んだ瞳には、一面に広がる空を映し出して。
「……はい。そんな隼さんが、私は本当に素敵だと思っています」
自分には彼が見ている景色を見ることはできない。けれど、彼のように前を向くことはできる。
祥真もまた、己の弱さと向き合ったのだ。ならば自分も――。
『着いた。どっち側のエレベーターで、どのあたりで止まってるかわかる?』
月穂が携帯を持つ手に力を込めたとき、祥真に言われ、ハッと顔を上げる。
すぐ近くまで祥真が来ている。
それがわかると、月穂はますます早く祥真と会いたくなる。
「向かって左に乗って……三階直前のことで……」
逸る気持ちを抑えて説明すると、電話の向こうから階段を駆けあがる足音が遠く聞こえる。そして、扉の奥からコンコンとノックのような音がした。
「あ。音が重なった。この辺りにいるな」
スピーカー越しではなく、直に祥真のくぐもった声が聞こえた。
「大丈夫か?」
月穂は左手をエレベーターの扉にくっつけた。
分厚く冷たい扉なのに、温かさが感じられる気がする。「はい」と小さく答えた。
祥真もまた、無意識に外側の扉に手を添え、敢えて携帯を離して言う。
「あともう少しだから。頑張れ」



