BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

月穂は必死に、前へ前へと松葉づえと足を交互に出す。
 やっと祥真のマンションが見えた。

 カフェからここまで来るのに、十五分ほどかかってしまった。
 以前訪れたときは、祥真に手を引かれて走ったこともあり、十分もしないで着いたはずなのに。

 最後の横断歩道を渡り終え、そびえ立つマンションを仰ぎ見る。顔を戻すと、エントランスに向けてまた歩みを進めた。

 部屋番号は覚えている。
 緊張しながらインターフォンに指をかける。ナンバーキーを押し、呼び出しボタンを押してみたが、やはりまだ祥真は不在だった。

(だけど、もう少ししたら帰ると思うって櫻田さんが言ってた)

 月穂の中で、引き返すという選択は毛頭ない。
 あと考えることと言えは、どこで待つかということくらいだ。

 どこで、と言っても、むやみやたらに歩き回れる足ではないし、そうかといって、エントランスは通行する人が多すぎて、不審に思われるだろう。

 どうしようかと悩んでいたときに、エントランスホールの奥から人の気配がした。
 月穂はそわそわとしながら、壁側に背を預け僅かに俯いた。

「あー。終わった終わった。予定より時間かかっちゃったよなあ」

 そう言いながら作業服を着た中年の男性が数人出てきた。
 工具箱やワイヤーやらを持っているのを見て、なにかの工事か点検だろうと察しがつく。