BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

「やっぱり、そういうことを直接言われるとうれしいですね。自信に繋がりました。ありがとうございます」

 自分の言葉ひとつでこんな眩しい表情が見られるなら、どんなに拙くてもきちんと言葉にして伝えるべきだ。

 月穂は改めて実感した。

 道路を一本渡ると、カフェソッジョルノが見える。
 ふたりは肩を並べて歩き、店の入口前に着くと、女性が会釈した。

「それじゃあ、ここで失礼します」

 最後に笑顔を浮かべ、店の扉に手を伸ばした彼女の背中に、月穂は声をかけた。

「あの!」

 女性が振り返るなり、早口で質問をする。

「先週の金曜日のことなんですけど、以前私と一緒にいた男性がカフェにいたかどうか、わかりますか?」
「ああ、たまに来てくださるお客さんですよね。そうですね。確か金曜日はいらしてました。いつものように窓際で本を読んで、時折外を眺めていましたよ」

 女性は宙を見つめながら答えた。月穂はすかさず質問を重ねる。

「何時頃までいましたか?」
「閉店までです。私が声をかけたので。いつもは閉店までいることないのに、最後まで席にいるのは珍しいなあって」

 彼女の不思議そうに首を傾げて言うことが本当なら、金曜日はずっと待っていてくれたに違いない。

 目線をカフェに滑らせ、祥真が座っていたであろう席の窓を見た。

「そうですか。ありがとうございます」

 深くお辞儀をし、左足を一歩踏み出したときだ。

「いいえ。またいらしてください。おふたりで」

 女性が口に大きな弧を描いてそう言った。