BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー

花田に続き、夕貴の電話にさらに後押しされ、月穂は真っ直ぐ祥真の自宅へ向かった。

 品川駅に着くと、改札を出て、祥真とふたりで歩いた道を進む。
 あのとき、緊張と戸惑い、そして密かなときめきを胸に隣を歩いていた。

 空を仰ぎ、歩調を少々緩める。
 祥真は毎日のように、この道でこんなふうに空を見ているのか、などと感じた。

 顔を合わせたら、まずはなにを伝えよう。
 無事でよかった、とか、怪我はないですか、とか。

 思考を巡らせていると、ハッとする。よくよく考えたら、金曜日の気まずい状態のままなのだ。

 約束をすっぽかされて怒っているかもしれない祥真に、気持ちを伝えるのが苦手な自分が、あの日のことをうまく説明できるだろうか。

 少し不安に思ったそのとき、近くのコンビニから自動ドアが開く音がして、顔を戻した。
 見ると、レジ袋をぶら提げて外に出てきたのは、以前訪れたカフェの女性店員だった。

 彼女は月穂と視線がぶつかるなり、すぐに「あっ」と言って目を丸くした。

「こんにちは。以前、お店に来てくださった方ですよね?」
「えっ。あっ……」
「あ、私『café soggiorno(カフェ・ソッジョルノ)』のバリスタです。すみません、店員の顔まで覚えてないですよね」

 女性は軽く頭を掻きながら、人懐こい笑顔を見せた。