「次、最後の大和さんですよっ」
「えっ?」

 月穂が確信したとき、乃々に肘で小さく小突かれ、小声で囁かれる。

「自己紹介してください」

 乃々たちが自己紹介をしていることにも気づかず、祥真に気を取られていた。月穂はあたふたと口を開く。

「や、大和月穂です。ええと……須田さんと同じ病院で臨床心理士をしています。よろしくお願いします」

 慣れない場で目を泳がせながら自己紹介を終える。
 すると、夕貴がにっこりと笑いかけた。

「よろしく! じゃあ、俺らも飲み物頼もう。祥真、ビールでいい?」

 祥真は月穂からふいっと視線を外し、淡々と答えた。

「……いや。ウーロン茶にしておく」
「え? 明日は休みだろ? まあ、無理強いするつもりはないけどさ」

 素っ気ない態度なのは、月穂相手だからということではないらしい。

 月穂は祥真の夕貴への態度でそう感じ、どこかホッとしていた。

「みなさん、おいくつなんですか?」

 乃々の質問に答えたのは、初めに来ていた金田(かねだ)だ。

「俺が一番最年長で三十二。やっぱり若者からしたら圏外?」
「えー。見えませんね! 全然大丈夫です、圏外なんかじゃありませんよ!」

 女子の反応にまんざらでもない様子の金田に続き、口を開いたのは夕貴だった。

「俺らは二十八歳! ここ三人は同い年なんだ」
「そう、同期ってやつで」

 同期という谷川(たにかわ)も夕貴と一緒に会話に参加したが、祥真だけは話に加わろうとしない。店員が持ってきたグラスを受け取り、黙って口をつけるだけ。

「やっぱり、パイロットって小さいときからの夢だったりしたんですか?」

 乃々の視線の先は祥真だ。
 祥真の言葉を引き出したい一心なのだろうが、彼はウーロン茶を口に含むばかりで一切口を開かない。

「そうだなあ。俺は、小学校のときかな。飛行機を操縦するってどんな感じなのか興味あったんだよね」
「俺はやっぱカッコいいイメージがあって憧れていたからかなあ」

 率先して答えるのは、金田とその隣にいる谷川だ。