不思議と力が湧くその声に、月穂は自然と顔を上げていた。
「確かにロスでのことは大きな出来事だったと思っています。だけど、やっぱり非日常の海外で出会ったからではなくて、隼さんだったから私は好きになったんです」
初めて『彼が好き』という言葉を口にした。
些細なことなのに、それだけで自分の気持ちが肯定され、揺らがないものに変わっていくのがわかった。
「祥真には、もうそれを伝えたの?」
「いえ……。まだです」
すると、祥真が「ふう」っと長い息を吐いた。
「本当、いつもあいつは涼しい顔して、なんでもちゃっかり持って行っちゃうんだよなあ。少し妬ましいよ」
オレンジ色の街灯を眺めながら苦笑する。それから、なにかを思い出したようにさらに笑った。
「CAからの信頼も厚い。俺たちが訓練生のときから憧れていた小田機長が担当するフライトも、いつもあいつが乗っていた」
夕貴は可笑しそうに細めた目を、時折辛そうに夜空を彷徨わせている。
月穂は彼の横顔が淋しそうに蔭っていくのを黙って見ていた。
「あいつのそういうところは男の俺から見たってかっこいいって思うけれど、実は悔しい気持ちもあるんだ」
とうとう頭を垂れてしまった夕貴に、月穂は真っ直ぐ伝える。
「隼さんは、周りが思うほどラクな生き方していないと思います」
「そりゃあ、大和さんはあいつのこと好きだから、そういうふうに見えるんだろうね」
夕貴は軽く握った手を口元に添え、短く笑って言った。
「こんなこと言いたくないけど……。祥真は刹那的な恋愛しか繰り返すことができないやつかもしれないよ」
その指摘に、月穂はきゅっと口を結んだ。
二度のキスも、夕貴が今言ったような感じで、その場の雰囲気でしたものかもしれない。
――雨の音に誘われた。
ただそれだけだ、という具合に。
一瞬、夕貴の言葉に心がぐらついた。
(ううん。でも……)
「確かにロスでのことは大きな出来事だったと思っています。だけど、やっぱり非日常の海外で出会ったからではなくて、隼さんだったから私は好きになったんです」
初めて『彼が好き』という言葉を口にした。
些細なことなのに、それだけで自分の気持ちが肯定され、揺らがないものに変わっていくのがわかった。
「祥真には、もうそれを伝えたの?」
「いえ……。まだです」
すると、祥真が「ふう」っと長い息を吐いた。
「本当、いつもあいつは涼しい顔して、なんでもちゃっかり持って行っちゃうんだよなあ。少し妬ましいよ」
オレンジ色の街灯を眺めながら苦笑する。それから、なにかを思い出したようにさらに笑った。
「CAからの信頼も厚い。俺たちが訓練生のときから憧れていた小田機長が担当するフライトも、いつもあいつが乗っていた」
夕貴は可笑しそうに細めた目を、時折辛そうに夜空を彷徨わせている。
月穂は彼の横顔が淋しそうに蔭っていくのを黙って見ていた。
「あいつのそういうところは男の俺から見たってかっこいいって思うけれど、実は悔しい気持ちもあるんだ」
とうとう頭を垂れてしまった夕貴に、月穂は真っ直ぐ伝える。
「隼さんは、周りが思うほどラクな生き方していないと思います」
「そりゃあ、大和さんはあいつのこと好きだから、そういうふうに見えるんだろうね」
夕貴は軽く握った手を口元に添え、短く笑って言った。
「こんなこと言いたくないけど……。祥真は刹那的な恋愛しか繰り返すことができないやつかもしれないよ」
その指摘に、月穂はきゅっと口を結んだ。
二度のキスも、夕貴が今言ったような感じで、その場の雰囲気でしたものかもしれない。
――雨の音に誘われた。
ただそれだけだ、という具合に。
一瞬、夕貴の言葉に心がぐらついた。
(ううん。でも……)



