「はい。ちょっと先を急いでいたものだから、それで」
「そう……。とにかく、明日からしばらく休暇を取って」
「大丈夫です! 今は歩き回るような業務も少ないですし。家にずっといるのもなんだか……」
「じゃあせめて、UALへはしばらくお休みということにしましょう。あそこはここより通勤が大変だから。先方へは私のほうから伝えておきます」
月穂は自分のせいで、多方面に迷惑をかけてしまったと奥歯を噛んだ。
EAPを任されたからには、這ってでも行きたい気持ちだ。
でも、無理に自分の意見を通し、また迷惑をかけるかもしれないと過り、思い留まった。
小さく唇を噛み、ひとこと「わかりました」とつぶやく。
花田は月穂の気持ちをよくわかっているようで、優しく月穂の肩に手を置き、微笑みかけた。
「帰りは大丈夫? 送っていきましょうか?」
「あ、いいえ。ひとりで大丈夫です」
月穂の頭には一瞬夕貴が浮かんだ。
まず先に、待たせてしまっている彼に連絡を入れなければならない。
すると、花田はすっと肩から手を離した。
「そう。無理はしないでね。帰りもタクシー使って。代金はあとで支払うから」
「いえいえ! それは結構です! 本当、大丈夫です」
勢いよく遠慮したからか、花田はそれ以上食い下がってはこない。「なにかあったらすぐに電話してね」とだけ言い残し、部屋を出ていった。
病室にひとりきりになった月穂は、簡易ベッドに浅く腰をかけたまま、ぼんやりとする。
ちらりと横を見れば、自分のカバンが置いてあり、そのポケットから携帯が覗いて見える。
なんだかすぐには手を伸ばすことができなかった。
「そう……。とにかく、明日からしばらく休暇を取って」
「大丈夫です! 今は歩き回るような業務も少ないですし。家にずっといるのもなんだか……」
「じゃあせめて、UALへはしばらくお休みということにしましょう。あそこはここより通勤が大変だから。先方へは私のほうから伝えておきます」
月穂は自分のせいで、多方面に迷惑をかけてしまったと奥歯を噛んだ。
EAPを任されたからには、這ってでも行きたい気持ちだ。
でも、無理に自分の意見を通し、また迷惑をかけるかもしれないと過り、思い留まった。
小さく唇を噛み、ひとこと「わかりました」とつぶやく。
花田は月穂の気持ちをよくわかっているようで、優しく月穂の肩に手を置き、微笑みかけた。
「帰りは大丈夫? 送っていきましょうか?」
「あ、いいえ。ひとりで大丈夫です」
月穂の頭には一瞬夕貴が浮かんだ。
まず先に、待たせてしまっている彼に連絡を入れなければならない。
すると、花田はすっと肩から手を離した。
「そう。無理はしないでね。帰りもタクシー使って。代金はあとで支払うから」
「いえいえ! それは結構です! 本当、大丈夫です」
勢いよく遠慮したからか、花田はそれ以上食い下がってはこない。「なにかあったらすぐに電話してね」とだけ言い残し、部屋を出ていった。
病室にひとりきりになった月穂は、簡易ベッドに浅く腰をかけたまま、ぼんやりとする。
ちらりと横を見れば、自分のカバンが置いてあり、そのポケットから携帯が覗いて見える。
なんだかすぐには手を伸ばすことができなかった。



