ここはどこなんだろう。
どのくらい走ったんだろう。
それさえも分からなくなっていた時。
「美紗っ―――」
雨の音に交じって聞こえた声。
「美紗っ!」
それがクリアに聞こえたと同時、急に体にブレーキがかかる。
「っ」
誰かに腕をひっぱられ、体が反転した。
「美紗っ、どうしたんだよっ!」
目の前には、黒い傘を片手に息を切らした久我くんがいた。
傘を持っていない方の手で、あたしの肩をしっかりつかみながら顔を覗き込んでくる。
「ん?どうした!?」
ひどく困惑した目。
心配そうな表情。
……久我くん……。
「うっ……ううっ……」
だけど。堪えられなくて。
そのまま泣き出したあたしを、久我くんは自分の胸に引き寄せた。
頭をしっかり抱え、あたしの体を傘で守りながら。



