君が好きなんて一生言わない。

「麗ちゃんを傷つけるひとは誰であっても許さない」


先輩の声は明瞭に響く。


涙が溢れた。


私の事情を知ってもなお庇おうとする先輩の様子を見て、美紅ちゃんは更にいらだったらしかった。

ぎり、と奥歯をかむと「どうしてなんですか?」と高圧的に疑問を投げる。


「どうして椎先輩はそこまでしてこいつを庇うんですか?庇う価値なんてこれっぽっちもない、目障りなこいつを!」


椎先輩は「目障りなんて一度も思ったことないけどね」と溜息を吐くと言った。


「価値がないから庇わない、助けない、ってことじゃないでしょ。

目の前でいじめられている人を見て助けない理由なんてない」



「それに」と椎先輩は付け加えた。



「麗ちゃんを傷つけられているのに助けないわけがない」



私を助けるのに理由なんてないと先輩は言う。

どうしてそこまで言い切るのか、どうして私を助けるのか、美紅ちゃんと同じで私も分からなかった。

美紅ちゃんのいうように、私には先輩がわざわざ助ける価値なんてないのに。


「分からないですよ、先輩。そんなやつ放っておけばいいのに」


眉間にしわを寄せて哀れむような表情をする美紅ちゃんに、椎先輩は無表情のまま視線だけを鋭くした。


「分からないなら分からなくていいよ。ただ麗ちゃんを傷つけるなら容赦しない」


しばらく睨み合いが続いて「分かりました」と美紅ちゃんが言った。


「この場は先輩に免じて引き上げます。でも、忘れないでくださいね、先輩が庇った"それ"は周りにいる人を傷付ける死神なんですから」