君が好きなんて一生言わない。

先輩の前でなら、新しい自分になれると思った。

私を取り巻く現状も、過去も、関係なく、ただ目の前にいる私だけを先輩は見てくれていたから。

それに先輩と一緒なら幸せになれるかもしれないと、そう思っていた。


だからこそ私の現状も過去も、先輩には知られたくなかった。

知られたくなかったのに。


よりにもよって、美紅ちゃんから伝えられてしまった。

それも目の前で。


__ああもう、終わりだ。

言いようのない絶望感が胸をみたしていく。

真っ黒いペンキで自分の世界を塗りつぶされていくような感覚だ。


絶望に揺れる視界で美紅ちゃんが口の端をあげて笑っているのがうつる。


悲しい。悔しい。辛い。そんな感情を混ぜたような、複雑な感情が膨らんでいく中、それまで黙っていた椎先輩は言った。






「だから、何?」





私も美紅ちゃんも分からなくて固まった。

先輩の言っていることの意味が分からなかった。



「麗ちゃんは死神ではないし周りの人を苦しめたりはしない。仮にそうだとしても、今麗ちゃんを苦しめているのはきみだよね」



言葉はナイフに例えられることも多いけど、先輩の言葉はまるで槍みたいだ。

黒く塗りつぶされた世界を破るような、鋭い槍。