君が好きなんて一生言わない。

「廊下で騒がないでくれる?うるさいんだけど」


その声は決して荒げてはいないけれど、確かに刺があった。

身も凍るような冷たさを纏っていて、守ってくれているのは分かっているのに心の底が冷えるような感覚がした。


「椎先輩、そいつをかばうんですか?」


けれど美紅ちゃんも負けてはいなかった。

腕を組んだまま、先輩に立ち向かっていく。



「椎先輩は分かってるんですか?そいつがどんなやつなのか」



やめて、と言いたかった。

声が出るならそう言いたかった。

椎先輩にだけは知られたくない。

私の身の上話も、今暮らしている場所での話も。

椎先輩だけには知られたくない。



「こいつの正体は死神なんですよ。

周りにいる人を苦しめ、両親と祖母を死なせた死神。一緒に暮らしてる親戚に迷惑をかけ、友達だって無意識に傷つける、最低最悪の悪魔」



__もう、泣いてしまいたかった。