君が好きなんて一生言わない。

今までが幸せすぎたんだと思う。

紗由がずっと一緒にいてくれたことも、椎先輩に出会えたことも。

その全てが夢だったんだ、きっと。

だから今夢から目覚める時がきたんだ。


叶うなら、ずっとこの夢が続いてほしかった。

眠りについてしまいたかった。

こんな悲惨な現実が待っているのなら。


叫びたかった。

叫んでしまいたかった。

何もかも忘れてしまうくらい、叫んでしまいたかった。

声にならない声で、名前の付けられない想いを吐き出してしまいたかった。

けど声はもうのどにつかえてでてこない。



「ようやく納得したの?」


うなだれる私に、美紅ちゃんが笑う。


「あんたはいるだけで周りを不幸にする死神なんだよ」


もろくなった心を貫くような美紅ちゃんの言葉が聞こえた時、突然後ろから腕を引っ張られた。

驚いて2,3歩よろけると、とんと何かにぶつかった。


「あ、ごめんなさい…って、え?」


振り返るとそこにいたのは椎先輩だった。

椎先輩が私の腕を掴んでいた。



「椎先輩、どうして…」


美紅ちゃんも目を丸くしていた。

けれど椎先輩はまっすぐ美紅ちゃんを見据えたままだった。