先輩は目を見開いて「ショッピングセンター?」と繰り返す。


「そんなところに行きたいの?」


驚きを隠せない先輩の言葉には急に恥ずかしくなって顔が赤くなる。


「私、ショッピングセンターに行ったことがないんです。だからいつか、行ってみたいなあって思ってて」


「あっ、でも先輩も忙しいですよね!」と慌てて私が言うと、先輩は首を横に振った。


「麗ちゃんの願いなら、いつでも叶えてあげるよ」


柔らかく微笑む先輩が優しくて、まるで木漏れ日みたいだと思った。

…なんで先輩はそんなに私なんかに優しくしてくれるんだろう。


「どうしたの?」


そのまっすぐな瞳を見つめても、答えは返ってこない。

私は首を横に振って「なんでも」と笑う。


今までに何度、先輩に聞きたい言葉を飲み込んできただろう。

言わなかった言葉と同じだけの勇気を、私は持てなかった。同じだけ手放したんだ。


あったかいこの関係を失うのが怖くて。



「じゃあ、今日行かない?」


「え?」


突然の申し出に素っ頓狂な声が出た。


「今日、もしかして用事があった?」と先輩が尋ねるけど、私は首を横に振る。



「決まりだ」



今日の放課後、私は先輩とデートする。