「すごい、ユズ先輩…」


ユズ先輩がボールを持つと違うんだ。

この人は絶対にシュートする。絶対にゴールを決める。絶対外したりしない。心の底からそう信じてしまえるものが、先輩にはある。


これが、ユズ先輩。

バスケ部のエース。


「ユズは、天才なんだよ」


「普段は阿呆だけど」と椎先輩はユズ先輩をまっすぐ見つめながら言う。


「あいつはバスケするのが大好きで、どんなときだってそれを忘れない。どんな強い相手にも苦しい展開にも恐れない。怖さすら楽しむ単純なバスケ馬鹿」


ワアッとまた歓声があがる。

何点目かのユズ先輩のゴールが決まった。


「…それがあいつの凄いところ」


ユズ先輩は心底楽しそうな顔をしている。

その顔はキラキラ輝いている。

眩しいくらいにかっこいい。


それを見つめる椎先輩の、あったかい表情も眩しい。


ピーッと鋭いホイッスルがまた鳴り響く。

あっという間に時間は進んで、第1クオーターが終わった。試合はユズ先輩のチームが押している。

これよりインターバルに入ります、というアナウンスが響き渡ると緊張から解き放たれたギャラリーはほっとざわめき出した。


「すごい試合でしたね…」


すると先輩は「まだ始まったばかりだけどね」と言う。


「それに麗ちゃん、さっきから『すごい』しか言ってない」