君が好きなんて一生言わない。

別に私を助ける必要なんてなかったはずだ。

私が起こられたって先輩には何の関係もない。

それどころか私を庇ったら、先輩が、園芸部が罰を受けることになる。

それなのに。


先輩は少し考えたようなそぶりをして、「別に」と答えた。


「でも」


先輩はその整った顔の表情を変えずに「そんなたいそうなことはしてないよ」と言った。


「まあ、鉢植えを置いておく場所を変えればよかっただけの話だし、きみがぶつからなくても他の誰かが壊したかもしれないから」


「気にしないで」と、先輩はまた前を向いて歩き始める。


けれど思い出したように「そうだった」と言うとまた振り返った。



「今日の放課後、西階段下。園芸部の活動するから」



それだけ言い残して、先輩はまた歩いて行った。

遠ざかるその後姿を私は呆然と見ていた。

あの氷室椎先輩と話せたなんて現実味がまるでなく、夢を見ているような心地だった。