君が好きなんて一生言わない。

「分かっています」


そう答えるとおばさんは満足したのか、また茶を啜り視界から私を消す。

リビングの向こうにあるキッチンに向かおうとしたとき、おばさんはまた言った。


「麗、なんだか今日は嬉しそうな顔をしているわね」


「えっ?」


思わずおばさんの方に振り返る。

おばさんはテレビを見つめながらまるで一人言のように言う。


一方で私はおばさんから目を離せなかった。


心臓は大きな音を鳴らし、不意打ちのようなその言葉に冷や汗をかいてしまう。


「何か嬉しいことでもあったんでしょう?」


「それくらい分かるわ」と言いながらおばさんは振り返って私を見くだす。


まるで凍てつく氷のような冷たい目で。


それから口だけを動かして言うんだ。感情が高ぶっているのか、少し早口で。


「あなたが嬉しそうな顔をすると、ゾッとするわ。恐ろしいったら、ありゃしない。いい、麗。あなただけは幸せになってはいけないの。絶対に。あなたも分かっているでしょう?」


そんなことないって、言いたい。

でも、言わない。

決して言い返したりしない。


言い返せば更に酷い目に遭うと知っている。


「…本当にむかつくわ。苛々するのよ。言いたいことがあるんでしょう!それならはっきり言えばいいじゃない!なんなのよ!その目は!」


キンと響く甲高い声。

私はこの声が昔から苦手だ。