あっけらかんと言ってのける紗由。

本当はそんなわけない。迷惑しかかけてないのに。


「紗由…」

「ほら、先輩のとこ行ってきな」


紗由はぐいぐいと私の背中を押して、廊下まで押し出す。


「うわ!」


最後の一押しは更に力が強くて、私は前に転ぶように2,3歩よろけた。


「紗由!」


「何するの」と言おうとしたけど言えなかった。

振り返ると紗由が優しい顔をして笑ってたから。


それから私はお弁当を持って、あの空き教室に向かう。

教室はあんなに騒がしいのに、空き教室の方へ進めば進むほど喧噪は小さくなって人通りも少なくなっていく。

教室から離れれば離れるほど息をするのが楽になる、そんな感覚がする。余分な力が抜けるような。


…先輩、もう来てるかな。


そんなことを考えているうちにいつの間にか空き教室の前まで来てしまっていた。

私はドアに手をかけながら辺りを慎重に見渡す。そして誰もいないことを確認するとドアをそっと開けた。



「遅かったね」