君が好きなんて一生言わない。

「そーなの?麗ちゃんくらい可愛かったら声かけられることも多そうだけど」


「まさか」と私は笑った。

クラスの中で孤立しているような私が、存在感だってほとんどないような私が、男の人に声をかけられるわけがない。

私がどんなやつか噂で広まってしまったから、余計に声をかけられることはない。

私がどんなやつか知ってしまった人はみんな、私と関わりたくないと思うから。


「まあ、それならいいけど。

男の人の誘いにほいほいついて行ったら駄目だよ」


先輩はそう言って振り返る。

そして私の目をじっと見つめた。

それから私の腕を引っ張って引き寄せる。

突然のことに理解ができず、くっついてしまいそうなほど近い場所に椎先輩の顔があって、心臓はどきどきと高鳴る。



「__ほら、こうやってキスされるかもしれないでしょ?」



私は心臓が口から飛び出してしまいそうなほど緊張しているというのに、先輩は余裕な顔をしているままだ。

それどころか慌てる私を見てわずかに目を細めている。


…からかわれてる。

そう気づいた私は恥ずかしくなって、ドン、と先輩を突き放した。


「かっ、からかうのもいい加減にしてください!」


すると椎先輩は「ごめん、ごめん」と謝ったけど、心から謝ってくれている気は全然しない。