しゃがんで花壇の花をじっと見つめると、まるで花が笑ってるみたいに輝いて見えた。
椎先輩が植えた花だからかな、なんだか特別な花のように思えてくる。
「…絶対、嘘だよね」
私はぽつりと呟いた。
こんなに花が咲いているのに、輝いているのに、好きじゃないなんてそんなわけがない。
「好きって言えばいいのに」
先輩は案外、素直じゃないのかもしれない。
鉢植えや花壇の花をひとつひとつ見て、全ての花がらを摘み終わり、先輩のもとへ戻ると「お疲れさん」とユズ先輩に出迎えられた。
「ありがとう」
無表情のまま椎先輩が言う。
それがなんだか嬉しくて胸がぎゅって締め付けられた。
「あー、悪いんだけど」とユズ先輩は後ろ髪を掻きながら言う。
「さっきバスケ部の奴らに呼ばれちまって…」
どうしても行かないといけなくなってしまったと言う。
椎先輩は怒るかと思ったけど、「いいよ」と簡単に頷いた。
「名前だけでも所属してもらってるだけで嬉しいから」
「…悪い」
ユズ先輩は申し訳ないという顔をする。
「いいから早く行きなよ。試合も近いんでしょ?」
ユズ先輩は目を見開いた。


