どう、思ったかな。

先輩は、私の話を聞いて。


怖くて俯いた。


先輩が優しい人だからってつい甘えて話してしまったし、話してしまったからもう遅いけど。

もし拒絶されてしまったらどうしよう。


そんな風に思いながら少し視線を上げると、先輩の視線とぶつかった。

先輩は机にうつぶせになりながら顔だけはこっちに向けて、話す前となんら変わらない表情をしている。

それから口だけ動かしてこう言った。


「初対面の人と話すの苦手なのに、俺とは話せるの?」


まさか質問されるとは思っていなくて、つい言葉に詰まる。


「…先輩は、昨日出会ったから初対面ではないですし」

「でも、昨日もたくさん話してくれたでしょ?」


それは私も不思議だった。


「…私も、分かんないです」


なんで先輩とは話せるのか。


「でも、先輩とは初対面な気がしなくて」


「可笑しいですよね」と私は笑って見せた。


「先輩と会うのは初めてのはずなのに」


「忘れてください」って言ったのに先輩は目を見開いた私を呆然と見つめている。


「先輩?」


呼びかけると先輩は私の腕を掴んで引き寄せた。

何が起こったか分からずに先輩の名前を呼ぶと、先輩はいつもより少し低い声で「ねえ、それ、わざと?」と聞いた。



「他の男にそういうの簡単に言ったらダメだよ」



先輩は溜息を吐く。