「だから、いつでもおいで」


椎先輩は窓の外の景色を見つめながら言った。

その言葉だけで先輩が何を言いたいのかが分かった。

きっと先輩はさっきのことを気にかけてくれているんだ。

私に居場所がないから、ここを使っていいよってそう言ってくれているんだ。


「俺、ちょっと寝ようかな」


「麗ちゃんも自由にしてて」なんて言うと先輩は椅子に座って机にうつぶせになる。

そして本当に目をつぶってしまうから、私は先輩の座る席の隣に座って問いかけた。


「__先輩は、何も聞かないんですか?」


閉じられていた目が開いて私を見据える。


「聞いてほしいなら、聞くけど」


素っ気ない。

先輩の言葉は突き放されるみたいに冷たくて素っ気ない。


けれど私には何よりも温かい言葉に聞こえた。



「…じゃあ聞いてください」


先輩は「ん」って顔をあげる。


私は話し出した。


人と関わるのが苦手なこと。

特に初対面の人と関わるのが苦手なこと。

怒鳴られたり責められたりする場面では、声が出なくなってしまうこと。

そのせいでクラス女子達に虐められていて、紗由しか話せる友達がいないこと。


けれど私はやっぱり話すのが苦手だから、きっとうまくは話せなかった。

きっと文章はぐちゃぐちゃだった。

聞きにくかったはずなのに、先輩は黙ったまま聞いてくれていた。

私の話を聞いてくれていた。