先輩に好きだと伝えたその週末、私たちは電車で何駅も離れた田舎に来ていた。


「初めて来た」

「私もです」


無人駅を降りると、穏やかな日差しの下に遠くまで田んぼや畑が広がっている。

雪は積もっていないのが幸いだけど、それでも風がびゅうびゅう吹き抜けて寒い。


「先輩もついてきてくださって本当に助かりました」


隣にいる先輩を見上げれば「俺も用事があるから」と言われてしまった。


「それに、俺も麗ちゃんもすごくいきたかった場所だし」


私は頷いて、目的の場所へと急ぐ。

先輩はもらった地図と目の前の景色を見比べながら歩いて、私はその後ろを歩く。


どこまで行っても田舎の景色は全然変わらない。田んぼと畑と、ときたま民家。

どこまでものどかな景色だ。


「ここの道を曲がるらしい」


一車線しかない道路を山に向かってしばらく歩いて、ようやく現れた分かれ道。

右に折れる道を曲がるとすぐに険しい山道になった。


「え、こっちで合ってるんですか!?」

「地図にはそう書いてあるけど?」


「なんなら麗ちゃんが見てみる?」と少し高圧的に言われて、方向音痴な私は「いやいや、先輩を信じます」と答えるしかなかった。


しばらく歩いていると急に開けた場所に出て、そこは気持ちのいい風が吹き抜ける場所だった。