「そんなわけない」と否定しようと思ってユズの方を向いたけど、俺は否定することができなかった。


ユズの目がいつになく真剣だったから。



「俺は麗ちゃんのこと好きだ」



分かっていた。ユズが麗に対して真剣なこと。

恋愛感情を持っていることも、分かっていた。

だから驚きはしなかった。



「お前もそうなんだろう?」




ああ、そうだよ。なんて、そんなこと言えるわけがなかった。

あれだけの罪を背負っておきながら、麗が好きだなんて言えるわけがなかった。


麗を好きだと公言することは、俺には贅沢すぎた。



「…お前の気持ちを、なんで俺に言うの」


するとユズは訝しむような目をして、それから溜息を吐く。

でも何も言わないで「お前は俺の親友だからな」と言った。


「お前に何も言わないままで麗ちゃんに言うなんてできない」


「それは俺の良心が許さない」と、なんとも律儀なことを言う。

それをユズにも言ってやれば「うるせー」と言われてしまった。



「でも、俺は本気だから」


釘をさすようにユズは俺を横目で見た。



「麗ちゃんのことが好きなのかそうじゃないのか、煮え切らない態度をしてるなら俺がもらう」



びゅうっと冷たい風が俺達の間を吹き抜けていく。