園芸部が作った鉢植えを豪快にひっくり返した麗。



俺は目を見開いた。



麗がここに来ることは確率が高いとは思っていた。


けど今この時まで一度も見つけられなくて、てっきり麗は他の高校に通っているのだと思っていた。


麗がここにいる。

あの時守れなかった麗が、ここに。


俺は心が震えていた。

自分に立てた誓いを果たすときが来たのだと、全身に熱が走った。


それから麗がおそらく鬼村先生にこっぴどく怒られるだろうことを予測した俺は、そのまま職員室に向かうと案の定麗が怒られている場面に出くわした。


「玄関横の鉢植えをひっくり返してしまったこと、この子を責めないでもらえませんか」


思わず、そう言ってしまった。

ここまで言うつもりもなかったのに。

自分でも可笑しいと思っていると職員室を出たところで麗に止められた。



「どうして、助けてくれたんですか?」



麗は俺を見つめていた。

驚きの表情で見つめていた。

けど、多分これは俺のことを思いだしたからということではないとすぐに分かった。

学校の女の子達が俺に向ける視線と同じものだと分かったから。

分かっていた。

麗が記憶を取り戻してはいなこと。

きっとそうだと思っていて、事実そうなのだろう。

けどやはり俺のことを知らない麗と対峙すると心が痛んだ。


「…別に」