君が好きなんて一生言わない。

ただ細長い緑の葉っぱがあるだけのさみしい花壇。

これ、何の植物だろう。

先輩に聞いてみよう、と思ったけれど、椎先輩の顔を思い浮かべると聞けないなと思ってしまった。

紗由の気持ちを知っているのに、聞けるわけがないと思った。


校門を過ぎたところでふと顔を上げると、そこには椎先輩がいた。

私は目を見開いて、距離をとる。


気づかないで、気づかないで。

そう念じながら歩いていたのに、突然後ろから声が飛んできた。


「おーい、椎!」


大きなその声に私も椎先輩もびくりと肩を震わせる。


「なんなの、ユズ」


私を追い越していったユズ先輩によびかけられた椎先輩は眉間にしわを寄せながら振り返った。

けれど椎先輩はユズ先輩よりも先輩に近い場所にいた私の存在に驚いて目を丸くする。


「あれ…麗ちゃん」


私は気まずくて立ち止まる。

どこを見ていいかもわからなくて黙り込む。


「え、麗ちゃんなのか?」


「全然気づかなかった」とユズ先輩は笑ったが、笑い事ではなかった。

今、椎先輩に会いたくはなかった。


「今、帰り?」


椎先輩に尋ねられて、私はどうしようもなくなって頷く。


「じゃあ麗ちゃんも一緒に帰ろう」


歯を見せて笑うユズ先輩に言われて、私はもう逃げ場がなくなってしまった。