君が好きなんて一生言わない。

話を終えると紗由は教室に戻っていったけど、私はどうにもご飯を食べられるような心境にはなくて、結局買ったおにぎり1つ食べることなく昼休みは終わっていった。

その後もぼうっとしたまま授業は流れるように終わっていって、気が付けば空の色が赤く染まっていた。

ホームルームが終わると、クラスメイト達はばらばらと散っていく。

クラスメイト達の声を聞きながらぼんやりと帰る準備をしていると、声が聞こえた。


「麗、また明日」


その声に振りかえると、紗由が微笑んでいた。

優しいブラウンのチェック柄のマフラーを首元で巻いて、コートも着込んでいる。

なんだかすっきりしたような、晴れやかな顔をしている。


「また明日」


私もなんとか笑ってそう言った。

紗由の姿が見えなくなるまでずっと見ていた。


そして、紗由の姿が見えなくなった瞬間に笑顔は消えていく。


誰かを好きでいることが、こんなに苦しいなんて知らなかった。

こんなに苦しいなら、好きになんてならなければよかったのに。

今すぐ嫌いになれたらいいのに。


そう思うけど、そう簡単にできないことは分かっていた。


できないから、今こんなに苦しいんだ。





昇降口で靴を履き替えて下校する。

校門の横には椎先輩が部活で育てているビオラの花が咲いていた。

それを見て胸がぎゅっと締め付けられたけど、そのビオラの鉢植えの隣には何も咲いていない植物があった。