君が好きなんて一生言わない。

「あれ、あんまり驚かない?」なんて紗由は笑った。


「誰かから、聞いた?わたしが椎先輩のこと好きだって」


紗由は鋭い。図星をつかれた私は小さく頷いた。


「そっか、わたしが原因だったんだね」


「わたしのことなんて気にしなくて良かったのに、麗は優しい」と紗由は言うが、どこが優しいのかさっぱり分からない。

…私は優しいんじゃない。ただ弱いだけだ。



「椎先輩の、どこが好きなの?」


震えないように平静を装って尋ねると、紗由は「そうだね、いろいろあるけど」とやさしい顔をした。

その顔は恋する乙女そのもので、いつも可愛い紗由がより可愛く見えた。



「…この前、バスケ部の試合で麗を探してた時に、一生懸命に麗を探してるとことか、ありがとうって言われたときに、ああ、好きだなって思ったの」



恋をすると人は可愛くなるというけれど、本当だった。

自分に向けられたものでもないのに、紗由が可愛くて仕方がない。