「よければ、かけてみますか?」


その場から動かないあたしへ向けて男性がそう言って来た。
「でも……」


「かけるだけですから」


小さく笑って、あたしに金粉入りの眼鏡を手渡して来た。


驚くほどに軽い。


これなら眼鏡をかけている感覚もないかもしれない。


あたしはその眼鏡を大切に両手で持ち、自分にかけてみた。


瞬きをして周囲を見回す。


「あれ? この眼鏡最初から度が入ってるんですね?」


「えぇ。そうです」