「あ……フサエ?」


不意に思い出した名前。


フサエ。


誰かが言っていた名前だ。


でも、それが誰の名前なのかあたしは知らない。


「里菜、なにボーっとしてるの?」


そう声をかけられて振り返ると、美穂が立っていた。


「美穂……」


「おはよう里菜。体調はもう大丈夫なの?」


「うん。平気」


会話をしながら肩を並べて歩き出す。