「慣れるんですか……?」


人の本心のほとんどが汚いものばかりだ。


それが無理やり頭のなかにねじ込まれてくるのだ。


こんな生活が続けば心が病んでしまう。


「最初の頃は人の悪口ばかりが聞こえて来てたけど、次第にそうじゃなくなってくるよ」


「え……?」


「声には出さなくても俺の事を心配してくれてたり、気にかけてくれる声もあった」


そう言われ、あたしはシカトをされていた時のことを思い出した。


あの時、たしかにあたしを庇うような声が聞こえていた。


だからこそ、ボールを持ってゴールへ走る事ができたんだ。


「考えてみたら、裏表のない人間の方がずっと少ないんだ。自分だってそうだ。心の声と口に出す声は違う。人を責めてばかりじゃ気が付かないけど、みんなそんなもんなんだよ」


安田さんの話をきいていると、少しだけ気分が楽になった。