そう思うけれど、それを実行する勇気はなかった。


今美穂から逃げ出せば、聞こえて来る本心は更に悪化したものになるだろう。


それがわかっているから、美穂に合わせて会話をするしかなかった。


人に合わせただけの会話は空虚だった。


相手の本心も、自分の本心も隠されたまま、表に出て来ることはない。


「言いたいことって、なかなか言えないよね」


お弁当を食べ終わった頃、あたしはそう呟いた。


「そう?」


美穂が首をかしげてそう聞いてくる。


「あたしは結構言ってると思うよ?(里菜には言わないけど)」


「そっか」


あたしは苦笑いを浮かべる。