避ける暇なんてない。


あたしは咄嗟に自分の顔を両腕でガードした。


腕の下でギュッと目をつむり、ボールが激突するのを待つ。


しかし、いくら待ってもボールはあたしにぶつかりはしなかった。


そっと目を開けてみると、あたしの前に佳奈が立っているのが見えた。


「佳奈……?」


「もうやめよう」


ボールを片手に持った佳奈が、誰ともなくそう言った。


「里菜の番だよ」


そう言い、佳奈はあたしにボールを渡して来たのだ。


あたしはそのボールを受け取り、一気に走り出した。