ジリジリする、ジレンマ。

あっちこっちに振り回されては、ぐるぐる廻る。
さっきまで、どうやってこの場から逃れようかと考えていたのに…。


彼の、視線にかちん、と嵌まり込んで。


お手上げ状態。
というよりも、完全ギブアップ。


「約束ですからね!」

「んー?何が?」

「何かしたらすぐ帰ります!」

「くく…わーかった、わーかった。じゃ、雪に埋もれる前に行くか…」


埋もれてるのは彼だけだ、私はさっきから遥かに背の高い彼に守られ、雪一つ掛かっていないのだから…。


「瑛飛さん、濡れちゃう…」

「そういうのは、部屋で言って?」

「え…?」

「はは、なんでもない…。さ、メシも食ったし…俺の部屋連れてくぞ?」

「あ…は、い」


ぎゅっと握られた手。
パサっと私を包むようにして落とされた彼のコート。


「風邪引かれたら、大変だからな」

「瑛飛さんだって!」

「俺?俺はね、大丈夫なのよ。これでも鍛えてるから」

「え、そうなんですか?」

「そーなの。よし、すぐそこだから、歩くぞ。まぁ…本当は車回そうかと思ったけど…こうして雪の中お前と歩くのもいいな…」

「…??」

「滑らないようにって、お前から抱き着いて来てくれるから」

「な!?」

「おいおい。離れるなよ。…危ないだろ」


そう言って、回される優しい腕。


愛しくて、愛されたくて…。
もっともっと、甘やかされたくて…。


こんな私の葛藤は、何時か貴方に打ち明けられるのでしょうか?