「ほ………瑛飛さん…?」
「んー?」
「私、お家に帰してもらえ、ますよね?」
「…さぁ?ま、とりあえず、メシ食おう」
にこにこ、にこにこ。
この笑顔には、騙されちゃいけない。
絶対に騙されない。
そんな気持ちとは裏腹に。
騙されてしまってもいいじゃないか…。
流されてしまってもいいじゃないか…。
そんな気がして来るんだ。
二人きりでいればいる程、強く。
なんだかんだと言っては、どんなに私がつんつんしておても、甘やかされている状態には変わりが無くて。
それなら、いっその事つんつんするのも止めようか、なんてまで思えてしまう。
本当に、キャラ崩壊。
出来れば、触れられたくない…私の心の最果て。
なのに、どうした事か。
「ん?どうした?」
何時しか彼に見つめていて貰わないと不安になっている自分がいて…。
その、獰猛な獣のような瞳で抉られるようにして、見つめられる事に喜びを感じるようになってきている自分がいた。
「な、んでも…」
「まぁまぁ、いきなり取って食ったりしないから…。安心しろよ。それで、だ…。水美、お前何食いたい?」
「え…っと……」
「リクエストないなら、俺セレクトでもいいか?」
「あ、はい……あ!でも…!」
返事をした後すぐに、自分の着ているスーツのスカートがしわくちゃになってしまっていた事を思い出した。
こんなんじゃ、とてもお店には入れない…。
すると、その慌てっぷりがツボったのか、信号待ちの車内で、ハンドルにおでこをくっ付けて、彼は笑った。



