「さてと。着いたぞ?」
「……えーと?ここは…?」
「ベタだけど。夜景の綺麗なレストラン。ここのホテルの最上階にあるんだ。バーもあるから、カクテルも美味いぞ?」
「……」
「水美、口開いてる」
「はっ?!」
見上げただけで、目眩がしてしまいそうなほど大きなホテルには、三星が飾られていた。
私は、足が竦む。
でも彼は、そんなことはお構いなしに私の手を引いたまま中へと入っていってしまう。
ちょっと待って…!
心の準備がっっ!!
私の叫びは、ホテルのロビーにこだましてしまいそうだったので、ぐぅっと喉の奥へとなんとか仕舞い込んだ。
エレベーターは音もせずに上がり、すぐに最上階をへと私たちをいざなう。
扉が開くと、そこはジャズピアノの生演奏が響き渡り、とても日本にいるようには思えなかった。
「さ。こっちだよ、水美」
「あ、ちょ、え、瑛飛さんっ!待って!」
「いいからいいから。キミ、予約している大原だ。席に案内してくれるか?」
「ようこそおいでくださいました、大原様。お席はご用意させて頂いております。こちらへどうぞ」
「ありがとう」
本当に、一年経っても、皇帝様に死角なし。
いや、一年前よりも、最強になっているかもしれない。
私は、全く強引さを見せないそのスマートなエスコートに、ただただくらくらしながらついていくだけで精一杯だった。



