ぽんぽん


空港で、ゲートに行く寸前にも、彼は何度も私の頭を撫でて行った。


離れていく、温度。

今までは、それが不安で仕方がなかったけれど。
彼の笑顔を見て、その不安はすぐに消し飛んだ。


「じゃあ…行ってくる」

「はい。行ってらっしゃい」

「毎日連絡するよ。ウザいくらいに連絡する」

「ふふ…時差あるのに…」

「それでも、水美に愛してるって言いたいから」

「ふふふ…そんな瑛飛さんが好き」

「そうじゃないだろ?」

「…愛してる」

「ん。ありがとう。じゃあ…」

「はい」


そんな感じで、飛行機に乗り込んで行った彼の、向こうでの評判は上々なようで、いつの間にか仲良くなったレオから、そのことをメールで報告される度に自分のことのように誇らしかった。



だから、自分も自分なりだけれど…彼に負けないくらい、頑張ろうとそう思うことが出来た。


そんな忙殺極まりない毎日を過ごして、半年が経ち正式に彼の後任として認められることになり、ある程度の余裕も出来てきた。

でも、それはけして自分一人の力じゃない。
課内のメンバーのお陰。
和やかに、いつも私のフォローをしてくれる、課長には頭が上がらないし、何の文句も言わずに助けてくれる彩良ちゃんには、最早足を向けて眠れない。