「…まぁ、和やかな雰囲気なのは、いいことだけどね?あんたたち、大事なこと忘れてないかい?」
その気怠そうな、ハスキーボイスにハッとして後ろを振り返ると、ドアの所にもたれ掛かって煙草を口にしているエリーサがいた。
「エリーサ…」
「さ。ここからは、少しビジネスの話でもしようじゃないか。瑛飛?」
その一言で、場の空気が一変する。
彼のご両親は、エマちゃんとヘンリーくんを部屋の外へと出すと、立ったままだった私にテーブルに付くようエスコートしてくれた。
「さて。会社では、なかなか最終的な所まで話が詰められなかったからね…どうだい?今ならいいだろう?」
意味あり気な視線を彼へと送るエリーサ。
それを受けて、彼は意を決したように私の方を向いた。
「水美、俺は、ニューヨークへ行く…それでもいいか?」
それに付け加えるように、エリーサが言葉を被せた。
「ミス久倉。…いや。水美と呼んでも良いね?あんたにゃ、瑛飛の後を任せたいって話が出てる」
「…え?」
「まだまだ、大事なクライアントやプロジェクトがある時に、瑛飛には抜けてもらうことになるからね。課長から、この話を私からあんたへ伝えて貰えないかと言われたのさ」
「そ、…そうなんですか…」
私は、エリーサの言葉に、きゅっと拳を小さく握った。
この仕事には、とことん相性が良いことを感じているし、誇りも持っている。
それを、課長と…その他の人たちから認められているのならば、これ以上幸せなことはない。



