「あ!あの!すみません!申し遅れました!私久倉水美と申します!瑛飛さん…いえ、大原補佐には何時も大変良くして頂いております!!」
我に返って、自分の自己紹介がまだだったことに気付き、私は捲し立てるように早口でそう言った。
ぺこぺこと頭を何度も上げ下げして。
「ふふ。そんなに緊張なさらないで?水美さん?貴女が瑛飛の彼女だということは、本人から聞いています。だから、畏まらなくても大丈夫ですよ」
にこにこ微笑む、お母様の顔を見て、あぁ瑛飛さんそっくりだな、なんて思う私。
「そうそう。瑛飛はあまり自分のことを話したがらないでしょう?それは私がノアと…彼女が20歳の時に再婚して。彼女と私は10も年が離れているから…昔からそのことを酷く気にしていてね。だから、きっと今日に至るまで水美さん、貴女を不安にさせていたんじゃないかな?」
「…い、いえ!あの…!」
「いいんだよ。水美。本当のことだから」
「でも…」
「瑛飛。いいお嬢さんじゃない。貴方には勿体無いわねぇ」
そこまで話が進むと、それまで壁際で黙ってこの騒動を見物していたレオが、口を挟んだ。
「だろう?だから、俺もそう言ってるのに。大体瑛飛には、他にいくらでも相手がいるじゃないか」
少しばかり拗ねた口調のレオに対して、ギロリとそちらを睨むと、彼はきっぱりとした口調でこう答えた。
「そんなもの、一斉精算だ。俺に必要なのは水美しかないし、それはこれからも変わらない。だから、諦めるんだな」
「え、瑛飛さん…」
「今までの俺はいい加減で、最低の人間だったけど。でも今は違う。水美に出逢ってからは、本当に水美だけしかいらない。今もそう思ってるし、今後も変わらない。信じてくれるか?」
「…っ」
ぽんぽん
いつも以上に優しく髪を撫でられて、薄っすらと涙が浮かんでしまう。
だって、こんなの夢にしか思えない。
こんな目まぐるしい展開に陥って、全然頭がついて行けてないというのに、彼はどこまでも甘くて、それを見つめる彼の家族の視線もとても優しい。



