そう言えば、家族の話とか…そんなことしたことなかったっけ。
そんな風に思ってたら、途端に、心の中に冷えた空気が入り込んでくる。
戦いは、長期戦になりそうだった。
自分のことをあまり話さない彼。
何度も話し合いをしようとした。
でも、その度に彼は曖昧に濁して、その代わりに私の全てを把握したがった…。
私は別に…確約が欲しいんじゃない。
ただ、欲しいのは、彼の中の真実だけ。
何度も言うけれど、彼の本音だけ。
それだけが、喉から手が出る程、欲しかった。
そんなこんなで、悶々とする日々を送り、近付いてきた週末。
いつものように、給湯室でコーヒーを淹れてると、後ろから、嫌になるほど愛しくて仕方のない声が、頭の上からやってきた。
ぽんぽん
と、お茶入れをまるで労うような温もり付きで。
「水美?今夜メシ食いにこう?」
「…予定あります」
「そんなこと言って、ここの所まともに二人の時間取れてない」
「…それは、瑛飛さんだって忙しいんですから仕方ないじゃないですか」
一度消えたかと思った敬語は、エリーサの登場でまた殻に閉ざされたように固く、前よりもキツいものになった。
「水美…ちゃんと話をしよう。俺は喧嘩がしたいわけじゃない」
「…っ」
そんなの。
そんなの、私だって一緒だ。
意固地になっていたって、良いことなんかありはしない。
分かってはいても、頭のどこかに…心のどこかに、鉛のようなものが沈んでしまい、ついつい棘のある言葉しか出てこない。



