そんな中、課内メンバーの中でとうとう彼の引き抜きの噂が立った。
どうやら、私のことをよく思っていないだろう女子社員から立った噂のようで、最初は誰も相手にしていなかったのだけれど、そんな噂を耳にしてもなんの反応を見せなかった私に、メンバーたちはそうに違いないと確信したようで…。
私は、彩良ちゃんからの意味有り気な視線も苦笑いでやり過ごして、自分にあてられた仕事を進めた。
あぁ…参ったなぁ。
こんな時って、どうすればいいんだろう?
確かに、引き抜きは国内の別の会社というわけじゃない。
日本発の新しいコスメブランドの海外進出。
彼は、その中でNo.1ポスト、すなわち社長となるわけだった。
どうしてそこのポジションに抜擢されたのかまでは、聞いていない。
私にとって、経緯はどうでもよかった。
ただ、彼の気持ちが聞ければそれだけで…。
なのに、彼はただ笑って、
「水美のことだけでいっぱいいっぱいだから」
としか、言わない。
いい加減、良い大人なんだから…私のことも子供扱いせずにちゃんと見て欲しいのに。
彼はどこかで、私を妹とでも思っているんじゃないか…そう感じさせる所があった。



