「うー…あーあ。もう考えるのやめよう」
私は、そう呟いてやって来たエレベーターに乗り込んで、静かな振動に身を任せながら、瞳を閉じた。
人を好きになることが、丸きり自分の全てを曝け出すことに、直結しているわけじゃないとは分かっているけれど。
自分ばかりが、全てを明け渡しているようで…少しだけ理不尽に思うんだ。
そして、こんな自分が最高に嫌な人間だと思ってしまう。
「さむ…」
ひゅうっと、冷たい風が吹き荒ぶ中、コートのポケットに両手を半ば無理やり突っ込んで、私は乱れる髪もそのままに、タクシーが拾える場所まで歩き出した。
それからすぐに拾えたタクシーの車内の温度に、少しばかり安堵して私はそのままシートに身を沈める。
本当なら…。
もっと強引に帰らせないで欲しかった。
彼は、貪欲なほど私の愛を欲する癖に、私の行動に関してはどこまでも私の気持ちを尊重させる。
いや…ある意味、放任主義なのかもしれない。
もしかして、「釣った魚には餌をやらない」タイプだったり…?
その割には甲斐甲斐しい。
…それに、それならば、何故こんなにも私は離れられないでいるのか…分からない。



