「じゃ、そういうことで」
「ちょ、水美?!」
彼の静止も聞こえないふりをして、私は鞄を掴むとひらひらと手を振って彼の部屋から出た。
ばたん
重厚な音を立て閉じたドア。
少しだけ…ほんの2秒だけ、待ってみるも彼の足音は聞こえなかった。
「はぁー…」
自分でも何がしたいのか、分からない。
愛されたいなら素直になればいいだけの話なのに。
どうしてか、それがいまいち出来ないのは…彼のバックグラウンドに、自分がまだきちんと入り込めていないせいだ。
エレベーターホールの壁をこつん、と蹴飛ばして口唇を噛む。
何が不満なの?
何が欲しいの?
考えれば考える程、私の思考は沼に陥る。
確かな愛は沢山と言っていいほど、受けている筈。
そして、流れていく感情の愛しさも彼から学んだ。
それなのに、何がこんなにも引っ掛かってしまうのか…。



