「でも。その様子じゃ付き合いはまだ浅そうね?」
「え?」
「ねぇ、貴女。瑛飛の事どれくらい知ってるの?」
「…は?」
どこの方向へ向かうのか、なんとなくは分かるけれど、それに反したい自分がそこにはいた。
だから、わざと分かりませんという顔をする。
「あら?瑛飛から相談も受けてないわけ?」
人を見下すような口調がやけに耳障りだ。
薄く微笑まれて、私の無意識に握られた手は汗が滲む。
…蛇に睨まれた蛙…そんな状態。
「…なんでしょう?」
つい、トゲついた声が出る。
でも、此処で負けるにはいかない。
私はきゅうっと手を握りしめて、彼女の先の言葉を待った。
「ふふ。瑛飛はね、その内会社辞めるわよ」
「………え、……」
思い掛けない言葉に一瞬怯んだ私に、彼女はとても満足そうにしている。
「そう。知らないのね…もしかして貴女…まだ瑛飛に抱かれてない、とか?」
「………っ」
完全に相手のペースに飲まれてしまった。
私は図星を突かれて言葉に詰まる。
そこに、彼女からの最終攻撃。
「本気で抱かれてもない貴女に…瑛飛の何が分かるわけ?それとも…遊ばれてるって分からない?」
毒ような、言葉だった。
それは、間違いなく私の胸の奥の方を抉っていく。
「あらあら。こんな事で泣かないで頂戴?そんな事されたら、私が悪いみたいじゃない。私は真実を言っただけ。ね?分かるでしょう?それくらい?」
「…っ。泣きません。それに、彼…瑛飛さんは、そんな人じゃありませんから」
強がりだとは分かっていても、どうにもならない。
私は口唇を噛んで、彼女に一礼すると、その場を離れた。
…本当は逃げるようで嫌だったのだけれど。



