「ねぇ、貴女?」
ほら…もうこの次の台詞なんて、聞かなくても分かってしまう。
「貴女が、ウワサの瑛飛の恋人?」
少し高飛車で、上から目線な声。
そして、自信に溢れて自分の魅力を知り尽くしているような、凛とした…言葉選び。
「…へぇ?あんまり大したことないのね」
そんなの、言われなくても分かってる。
だから、私はさもそんな言葉は聞こえませんでしたと言った風に顔を上げて、ぺこり、と頭を下げた。
「…お疲れ様です」
「…皮肉ね」
どうやら、私は彼女の地雷を踏んだらしい。
彼女を目でとらえれば、そこには海外モデル並みに艷やかなボリュームのある髪。
鼻筋のスッと切れた顔立ちは、シャープに整っていて、全体的に敢えて言うなら、女豹のようにしなやかだった。
「……瑛飛の趣味も変わったわね」
ふん、とそう言って退けると、まるでポージングを取るようにして、腕を前で組まれ…私をもう一度値踏みするかのように眺める。
下から上へ、上から下へ。
舐めるようにして…そしてそれが終わると勝ち誇ったようにこう言った。
「まぁ、瑛飛からしたら、貴女みたいな若い子は何人でもイケそうだけど」
ふふふ、と彼女はとても楽し気だった。
私はそれを見て、なんとなく彼と通じるものがあるなぁとぼんやり考えていた。
「ちょっと、人の話聞いてるの?」
「…はい?」
ほんの少しヒステリックになった声。
それでも彼女のプライドがそうさせるのか、声は極めて小さく、表情も変わらない。
「えっと…」
「ほんと、鈍くさい子ね…それでも瑛飛の部下なの?」
この言葉には流石にカチンとくる。
実際の仕事の様子も見ていない人に、何でそんな事を言われなければならないのか…。
「部下です…そして、ちゃんと恋人ですよ?」
「……へぇ?…そう?」
私から出た「恋人」、というワードに、彼女の瞳がギラ付いたのが見て取れる。
これは、所謂修羅場になるんだろうか?



