「補佐…?」
「んー?」
「何時まで人の髪触ってんですか」
「ああ、悪い悪い。久倉の髪、気持ち良すぎて」
「…へんたい」
「そーゆー可愛くない事いうと…後々、酷い事したくなるんだぞ?男って…」
ぼそり。
呟かれた言葉は遥か上の方だったから、私の耳には上手く届かなかった。
「…え?」
「なんでもなーい。じゃ、第二会議室に持って来くれよ?」
「あ、はい」
そう言って、私から離れていく温度を…咄嗟に捕まえてしまいそうで、そんな自分に戸惑った。
「なに…してんだろ。私」
左手が空を切った。
別に、密着していた訳でもないのに、先程まで隣りに居た彼の温度が、身に染みたように切ない。
こんな風に拗れて行く感情は知らない。
今までの恋愛が、それを物語る。



