もう、我慢なんて出来ない。
愛しさで、気が狂いそう。
私の限界を…いとも容易く解き放っていく。
明日になったら、またただの上司と部下になってしまうと思っていたから…。
「瑛飛さんは、優しいですね」
「お前だけにだよ。他なんかどうだっていい」
「…うそつき……」
「うそじゃない」
「……っ……」
「泣くな、水美。じゃないと抱き締めたくなる…」
尚も前を向いたまま苦しそうに呟く彼。
自分の中の衝動と戦う彼の姿を目の当たりにして思った。
普段の生活からしても分かる事。
何時も、自分を犠牲にして…盾になって、部内を盛り上げてくれる彼。
鬼軍曹という仮面をわざと被って、誰よりも先に自分が
ミスを被る。
雷みたいなゲキを飛ばすフリをして、誰よりもその人を応援をしている。
…私は知っている筈だ。
目の前の彼が、本当は誰よりも傷付き易いという事を。
人の心に敏い癖に、自分の心の痛みには鈍感で…そういう意味では不器用だという事を…。



